財務諸表は、「生きた教科書」。
有名企業の財務諸表を比べることで、経営分析の基本と実務で使える会計知識を同時に学べる、経営や会計を学び始めた人は
必見の一冊。
はじめに
本書は、有名企業の財務諸表を用いて、「会計の知識」「経営指標の仕組み」「企業分析の方法」を学ぶことを目的としています。
会計とビジネスのつながりを意識して書かれていて、会計や経営に詳しくない人や学び始めた人もわかりやすい工夫が取られています。
特におすすめできるポイントを2点あげてみます。
「会計」と「ビジネス」をつなげてわかりやすく説明
会計について書かれた本、またはビジネスについて書かれた本は数多くあります。
しかし、その両方をつなげて解説した本はあまり見かけません。
本書は、単に財務諸表の数値を読み、会計や財務分析を学ぶだけでは無く、数値から見えてくるビジネスの実態(業種の特殊性、ビジネスモデル)を明らかにします。例えば、「セグメント利益」に注目して、フジ・メディア・ホールディングスがメディア・コンテンツ以外に都市開発・観光事業を事業の柱にしている事を明らかにしています。
本書で取り上げられた例を通して、「企業のビジネスモデルや戦略が財務諸表に数値として現れること」を理解できると思います。
代表的な2社を対比して説明
本書は各章ごとに、業界で競合する2社の財務諸表を対比して分析する構成をとっています。
会計の勉強を始め、財務諸表の種類や「営業利益」、「自己資本比率」などの用語を意味が分かるようになっても、実際に財務諸表を見た時に、その数値が高いのか低いのか、そもそもどのような意味を持つのか、判断しづらいことがあります。
しかし、2社を対比して説明することでそれぞれの企業の特徴や強みが浮き彫りになり、とても分かりやすかったです。
感想
上記にあげたポイントによって、会計とビジネスを同時に紐付けて理解することができました。
本書で取り上げられた企業について、メディアや雑誌などによって、例えば、
といった事は知っていました。
しかし、情報として知っていても、具体的に根拠のある数値として確認したことはこれまでにはありませんでした。
本書は財務諸表の数値からこれらの根拠を導く考え方を重ねて紹介しています。
それによって読者は、ビジネスでの施策がどのような財務諸表上の変化をもたらすか、という「仮説→検証」というプロセスを意識するようになるでしょう。
また、これらの考え方で財務諸表を見ることによって、数値という実態を伴った存在として企業をイメージする事が容易になることも考えられます。
本書では24の企業を取り上げましたが、上場企業は数千社に及びます。
本書で学んだ経営指標や分析方法を用いて、自分の興味のある企業や話題の企業について、「施策が財務諸表にどう反映されたか」「財務諸表の○○の項目が低調だったので〜という施策をとった」と自ら仮説を考えて検証する機会がまだまだあるという訳です。
本書で学んだ手法や考え方を応用して、財務諸表を「生きた教科書」として、数多くある別の企業の分析に利用して儲けのヒントを見つけ出す。そのために、まずは手元に置いて企業を分析する型を身につけたい一冊です。