今年話題となった「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」の内容が素晴らしかった為、著者の津川友介さんの前書『「原因と結果」の経済学』(中室牧子さんと共著)を続けて読みました。
両書の簡約
『「原因と結果」の経済学』では、因果関係や相関関係の違いやそれらを見分けるための方法論(因果推論)を身につける必要性を述べられています。また、データが溢れる現代社会において、簡単にデータ分析が出来るようにはなったが分析結果を正しく解釈できるようになった訳ではない、としてデータの読み解き方について十分な説明がなされています。
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」では、日本の食事と健康について、メディアや書籍において多くの健康情報を入手しやすくなっているが、その多くが科学的根拠にもとづいていないとして、科学的根拠にもとづいた、現時点で体に良いとされる食群の紹介をされています。
感想
両書では、ともに冒頭部分で「メタボ検診を受けていれば長生きできるのか」「炭水化物は健康に悪く、食べると太る。」といった、一見「イエス」と答えてしまいそうな問いかけをしています。
これらの、一見正しそうだけど科学的根拠に基づかない通説が両書では多く紹介されています。
それら個別の事例に興味を惹かれがちですが、それだけではなく、情報が溢れる現代社会においては、データの分析や分析結果の解釈を正しく行う事や、エビデンスに基づく判断、行動の重要性を訴えておられる様に感じました。
(両書ともに巻末には多くの参考文献が並び、情報元がわかりやすい)
また、エビデンスにも強弱があり、複数の研究結果をまとめて全体の関係を明らかにする「メタアナリシス」が最も強いエビデンスを持つという事も両書ともに記述されていて、印象的でした。
(専門家の意見や、観察研究を過大評価していた)
『「原因と結果」の経済学』の冒頭で、教育と分野では根拠のない通説が山ほどあるという事が述べられていましたが、食や健康の分野においてもそれは顕著で、「○○は健康に良い」的なフレーズを目にしない日は無いくらいです。
それらの情報を鵜呑みにするのでは無く、エビデンスに基づいた正しい行動をとる事が必要で、その入り口として両書は最適の役割を果たしています。