棒グラフや折れ線グラフなど、主要なグラフに関する知識と見せ方を紹介した一冊。
グラフの歴史を合わせて説明する事で、グラフの表現方法をより深く紹介する事に成功した。
本書のあらすじ
グラフの本といっても、装飾やデザインなどのテクニックを紹介するのではなく、
「なぜそのグラフを使うのか」という本質的な問いに答える一冊です。
著者の主張は、「多くの人が曖昧な知識のまま、思い込みと勘違いでグラフをつくった結果、わかりにくいグラフが蔓延している。」というもの。
続けてグラフの目的や特徴をシンプルに説明しています。何点か抜粋してみます。
- グラフは言葉を不要にして、データを一瞬で伝える
- 数字を絵にすることで、覚えやすくなる
- 伝えたい内容の為に、適したグラフを用いいる
- グラフはなんとなくつくるのでは無く、わかりやすさの根拠を持たなければならない
本書の構成
本書の構成は3つに大別されます。
- 代表的なグラフの特徴とそのグラフを使うときの注意点
- グラフが発明された歴史や経緯の説明
- オープンデータを用いた社会分析
個別にみていきます。
1 代表的なグラフの特徴とそのグラフを使うときの注意点
代表的なグラフについて、得意な表現と特徴をシンプルに紹介していてとても分かりやすいです。
例えば、
折れ線グラフはデータの「推移」が得意
円グラフはデータ全体の「内訳」の表現が得意
上記のように結論はシンプルですが、各グラフごとに具体例を提示して丁寧な解説がされていたり、グラフをつくる際の注意点が細かく説明されています。
全編を通して数式などによる説明も無いので、わかりやすくグラフの基本的知識を身につけられるといえます。
2 グラフが発明された歴史や経緯の説明
グラフを誰がいつ発明したかといった読み物として読んでも面白いですが、登場人物とグラフが発表されるまでの背景を追う事で
「グラフの発明者は何を表現したくてグラフを使用したのか」という部分がおぼろげながら見えてきて興味深かったです。
そして、「自分が伝えたい内容をグラフで表現する」という事は、今日でもグラフをつくる際に変わらず必要な姿勢だと思います。
3 オープンデータを用いた社会分析
「日本の生産性は本当に低いのか」「雑誌は本当に衰退しているのか」「大阪府構想はなぜ否決されたのか」というテーマを題材としてデータジャーナリズムについて述べた章があります。
一般的に語られている説が、データを照らし合わせてみると必ずしもそうとはいえない事を実例を交えて紹介されています。
限られたデータだけを根拠として語られる説を鵜呑みにするのではなく、データやグラフを読み取る国語力が重要であったり、より多くのオープンデータの公開、精度の高いデータ提供が必要としています。
まとめ
「グラフをつくる前に」というタイトルですが、「グラフを見る前に」読んでおきたい
本でもあります。
本書ではグラフの特徴をシンプルに説明することで、グラフの善し悪しについて「なんとなく」といった曖昧なものでは無く、明確な根拠を持った判断基準を伝えることに成功しています。
生活をする上でグラフの作成や解読は必要不可欠です。本書を読み、グラフの知識や判断基準を学び直す事をおすすめします。