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マトリックスのDVD発売20周年とレンタルビデオ店の話

2020年3月17日、映画「マトリックス」のDVDの発売日からちょうど20年経過しました。
当時、私は地方都市のレンタルビデオ店でアルバイトをしていました。
その頃を思い出して、マトリックスとDVDの普及の関係、それに関連して当時のレンタルビデオ店の話を書いてみたいと思います。

マトリックスとは

マトリックスは1999年に公開された、監督:ウォシャウスキー兄弟、主演:キアヌ・リーブスによるアメリカ映画。

SFをベースにワイヤーアクションなど当時のVFXを駆使した映像や哲学的なストーリーが話題を呼び大ヒット、その後続編も製作されました

マトリックス発売以前のDVD市場

「映像革命」とも称されたマトリックス。最先端の映像をVHSよりもDVDで鑑賞したいというユーザーが多くいましたが、アルバイトをしていた店舗では当初レンタル用のマトリックスDVDは入荷しませんでした。

理由は、DVDプレーヤーの普及率の低さです。1996年にDVDメディア及びDVDプレーヤーが発売されましたが、2000年3月時点では高価格(低価格でも5万円以上)とタイトルの少なさから一般層に普及するには至っていませんでした。

PS2とマトリックス

マトリックスの発売よりおよそ2週間前、2000年3月4日に家庭用ゲーム機プレイステーション2(略称:PS2)が発売されました。

プレイステーションの後継機であるPS2はゲーム機としての性能の高さに加え、主要メディアとしてDVDを採用したこともあり、DVDプレーヤーとしても注目を浴びました。発売当初のメーカー希望小売価格は39,800円で、DVDプレーヤーとしては破格の安さです。

マトリックスのDVDは、VHSに比べて高画質で見られることに加えて、長時間の映像特典や安めの販売価格(税抜き2,500円)なども相まってヒットタイトルとなり、PS2との相乗効果でDVDプレーヤーの普及が押し進められました。

2000年当時のレンタルビデオショップの状況

先に述べたように、2000年頃はレンタルといえばビデオが主流でした。同じタイトルでも字幕と吹替の2種類があり、例えばヒューマンドラマは字幕版が多く借りられ、アクションは吹替版の比率が高くなるなど、映画のジャンルによってレンタルの傾向が変わっていたと記憶しています。

3時間を超える長尺のタイトルではビデオが2本組になり、大ヒットした「タイタニック」のレンタル開始当初は2本組の商品を100本近く入荷したという話も聞きました。

また、この頃は個人経営のショップも存在していて、中規模の店舗では仕入れないような作品(主にミニシアター系)を入荷して、映画好きのスタッフの方が手書きPOPで作品を紹介するといった店舗の個性が楽しめた時代だったとも思います。

レンタルビデオ店でのDVD取り扱いの変化

マトリックスとPS2の発売開始、DVDプレーヤーの価格低下によって、DVDの普及が徐々に進み、レンタルビデオ店での取り扱いも徐々に増えていきました。それは以下の様な流れだったと記憶しています。

  1. 新作タイトルのDVD入荷(VHSと並行して取り扱い)
  2. 定番タイトルの入荷とDVDコーナーの設置
  3. 商品棚でのVHSとDVD併設
  4. VHS抜き取り
  5. DVD化の完了

(1)DVD普及当初はVHSの需要も高かったので、両方入荷していました。全てのタイトルでDVDが入荷するのではなく、ビッグタイトルに限定されていました。(2)DVD取り扱いタイトルが少ないうちは、特設のDVDコーナーを設置して、ドラマやアクションなどジャンルを問わずコーナー展開をしている店舗が多かったです。(3)その後、タイトルが増えてくるとDVDとVHSを棚に並列するようになり、(4)DVDの普及率が高くなるとVHSを中古販売に回して(5)DVD化への移行が完了、といった流れでした。

海外テレビドラマと韓流

2000年代前半のレンタルビデオ店で欠かせないトピックが海外テレビドラマと韓流ブームです。海外テレビドラマでは2003年にレンタル化された「24」が爆発的な人気を博しました。
当時、新作のレンタル開始日に何人もお客さんが並んでいたのを覚えています。その後も、「プリズン・ブレイク」や「LOST」などが人気を博し、海外ドラマは一ジャンルとして定着した感があります。

韓流ブームは2003年の「冬のソナタ」の放送に端を発します。レンタルビデオ店では韓国テレビドラマのユーザーが増え、これも一ジャンルを形成するに至りました。

TSUTAYAではそれぞれコーナー展開や棚を新設したり、積極的にプロモーションを行っていて、海外テレビドラマの流行は、レンタルビデオ店の役割が非常に大きかったと思います。

ちなみに自分は、2000年代の海外テレビドラマの人気は以下の理由により、DVDの普及によるところが大きいと思っています。

  1. DVDは1枚に字幕と吹替が収録されているので、仕入れ枚数を節約できる
  2. VHSと比べると嵩張らないので一度に多くの枚数を借りる事ができ、シリーズを一気見しやすい
  3. シリーズものの場合、ジャケットのデザインによる訴求力よりも巻数表示が重要なので陳列スペースを縮小でき、多くの商品を展開できる

DVD普及後から現在までのレンタルビデオ店

店舗からVHSが無くなり、DVDに移行が完了したのは店舗間格差はありますが、2004年から2005年の間だと思います。

レンタル市場規模の最盛期は2007年でその後、市場規模は下がり続けています。つまり、VHSからDVDへの移行が完了した直後に市場の縮小に見舞われたことになります。

レンタル市場の代わりに急成長したyoutubeなどの動画サイトやネットフリックスなどのストリーミング配信によって、映像コンテンツを視聴するシーンは増えましたが、映像パッケージをレンタルして視聴するスタイルは今後も減り続けるのだろうと思います。

実際に、個人経営のビデオ店は殆ど姿を消し、業界大手のTSUTAYAも閉店が目立ちます。
レンタルビデオ店でアルバイトをしていたので寂しい気持ちがありますが、そういう自分もレンタル店への来店頻度は以前よりも、ずっと少なくなりました。

最初に取り上げたマトリックスの新作「マトリックス4」がシリーズとしては18年ぶりとなる2021年に公開を予定します。DVD時代の幕開けを飾った作およそ20年たった世界で、どのように視聴されるか楽しみです。